2008年11月22日土曜日

鼻水


 あまりきれいな表現でなくて、ごめんなさい。ナルちゃんが鼻水をたらしました。

 数日前から、神戸も木枯らしが吹いて、空気にも本格的な冬のにおいを感じます。毎週1回、ひ孫のナルちゃんちへお邪魔するのが楽しみな実家の母。つい最近、そのナルちゃんが鼻水をたらしていたらしく、久しぶりに訪れた実家で、その話題で盛り上がりました。母は「鼻水」が気になって仕方がありません。これから冬が厳しくなっていきますから、風邪を引かさないかというのが心配らしい。姪に「寝床が悪かったのかなあ」で始まり、ナルちゃんの着る物や暖の取らせ方など、いろいろ知恵を授けたいらしい。姪のまわりには、子育てを経験した女性は母を除いて私しかいませんので、つい「いくら完璧と思っていても、鼻水をたらす時はたらすし、風邪を引く時は引きます。その程度で身体を慣らしておくのは、かえって必要かもね。」と、つい口に出してしまいました。
 ナルちゃんですが、まだ2、3歩あるく程度で、今は家の中にいることが多い子です。あと2年もすると幼稚園へ行くのでしょうが、そこは集団で生活する場です。そうなると否も応もありません。病気に限らず、他の子どもからいろいろな影響を受ける環境が待っています。

 姪の住まいは最近建てられたばかりのマンションで、その構造は、母が私達姉妹を育てた頃の住宅とはまったく機能がちがいます。気が付いただけでも、建物玄関口のセキュリティシステムと2人の警備員が24時間勤務、室内は広々としていて、機密性が高く、フローリングの床は暖房機能付き、お湯はセントラル形式の瞬間湯沸しなど、普通に暮らす人たちの条件を十二分に満たしているように思います。寝具も羽根やら羽毛やらで出来た布団にくるまれ、それでも鼻水が出るのは、寝ている間に布団を蹴飛ばしてゴロゴロするからでしょう。風邪が心配なら、しっかりした生地の寝巻きでも着せたらすむ程度のこと。「お母さん覚えてる?私達が小さい頃は、あってもせいぜい湯たんぽで、暖房機器がないからあの冷たいシーツが温まるまで大変な思いをしながら寝てたわ。それでも、風邪なんてほとんど引かなかったし、そのおかげかどうかは分からないけど、この年になってもめったに引かないわよ。」
 そんな話をしていると、変な方向へどんどん話題がそれます。学校へ行っている頃は、「女の子はスカートでストッキングもはかせてもらえなかったし、ごわごわするから制服の中にセーターも着れなかった」とか、「丈の長いコートも禁止で、寒さに震えた」などなど。寒い思いをしたことは覚えているのですが、風邪を引いたことがあるかどうかは、記憶にないのです。専門家ではありませんが、私達は多分、身体自体が体温調整していたのではないでしょうか。 
 母にすればたかが「鼻水」の話をしているつもりでしょうが、私がどんどん知ったふうな口を利くことで、収拾がつかなくなってきました。私も母も、自分達の育った時代を振り返ってのやりとりです。今の時代は住環境すら私達のそれとは違うのですから、姪自身の育て方を体得したほうが、ナルちゃんのためにはいいんじゃないでしょうか。ナルちゃんに「よくない経験はさせない」ことが、本当にナルちゃんにとっていい事かどうかは、その問題によっては疑問です。家で出来る経験はなるべくたくさんさせることで、新しい環境にソフトランディングできるはずだと思うのです。
 
 私自身の子育てを振り返ってみると、海外での子育てだったため、夫を除いて母のようなアドバイスをする人が、身の回りにまったくいませんでした。情報も経験もないことが反って、子どもに教えられることになり、親として育てられてきたのだと感じます。姪は今、ナルちゃんの様子を見ながら、一緒に育っている途中なのですから、そばで見守ることが寛容というもの。私が母に一つ言えることは、子どもが違えば親も違うように、子育ては人それぞれに違うはず。それさえ分かっていれば、理解してもらえると思うのです。

 それでも「理屈はいいから。ナルちゃんが鼻水をたらさないような方法を考えてあげないと」と、一蹴されました。私は母からすると、まだまだ「洟垂れ(こぞう)」のようです。

 

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