2008年11月17日月曜日

ロボット革命


 私の価値観を大きく変えた「ロボット革命」という番組がありました。

 我が家にはテレビがないので、久しぶりに母の家で日本の番組を見ました。そのテレビを見て思い出したことがあります。15年くらい前の話なんですが。その当時、週末になると日本語の教育という名目で、子ども達と一緒に貸しビデオを見ていました。その一つに「NHK特集・ロボット革命、一体今なにが?(記憶違いかもしれません)」があり、センセーショナルな題名だというだけでなんとなく借りたのです。見終わったとたん、頭の中は「あかんやん、想像できへんわ」という声で一杯でした。将来、一体このロボットは、世の中でどんな役目を果たすの?と。
 私の世代で「鉄腕アトム」を知らない人はあまりいないでしょう?この番組は、ある大学でのロボット作りを「革命」として、アトムの実現を予想させるような内容になっていたのです。対象物を1秒で捕らえられる目を持ち、まだひざを曲げるまでには至らずとも階段を上ったり、近い将来には走ることも可能なことを示唆する歩行するロボット。バッテリーさえ縮小化が実現すれば、人間と変わらない能力を持つロボットの実現も夢ではない、と言っていたのです。そして3年前、私はホンダのASIMOのデビューを目にしました。
 この番組を見た意味は大きく、それまでの私の子育ての考え方を変えさせました。

 かつて「アポロ11号月面着陸」という歴史的な出来事が、日本のテレビでも放映されたのを、覚えていらっしゃいますか。私も家族と一緒に、ニール・アームストロング船長が月面に第一歩を踏み出した映像を見ていたんですが、母が突然、「これ、作りもんちがうの?」とおっしゃった(!)。家族からあっけにとられた目で見られて、冗談だと言い訳していましたが。母にそう言わせるほどの「信じられない」出来事だったのです。なにせ、一生涯でただ1回、プロペラ時代のYS11に乗っただけで大騒ぎした人ですから。
 このアポロ宇宙船から40年たったASIMOの登場まで、世の中の科学的な変革は至るところに見られます。コンピュータという魔法の機器の出現は最たるものです。コンピュータが現代社会で果たしている役割は大きく、これがない生活は想像もつきません。ある日、水中でテニスをしているコマーシャルを見て、「水の中でもすごいスマッシュ打ってる!」と言いましたら、「お母さん、それCG(computer graphics)だから」と言うではありませんか。その頃、CGという言葉もコンピュータが作り出す虚像だということも、子ども達に教えられるまで知りませんでした。それがあまりにも本物らしく作られていたために、素晴らしいと感じるより反って、ちょっと怖いなあと思ったものです。
 将来は、ロボットもこれと同じように、人間社会に不可欠な物になるのでしょうか。そうすると、人と人との間の共存ばかりでなく、ロボットとの共存が謳われる時代が来ないとも限らないということです。まるで、小さい頃に読んだマンガの世界が、日々、現実化していくのを実感します。これらを身近にしながら育つ子ども達に、将来、一体どのような影響を与えていくのでしょうね。
 技術ばかりでなく経済の世界でも、庶民の感覚とはかけ離れたことが、私達のまわりで頻繁に起こっています。それらすべてを把握することは難しい時代です。40年前の母の姿は、私には「世の中の動きが見えていない」状態に写りましたが、現在の私がまるでその当時の母のようで、それをはっきり自覚しています。
 
 この「ロボット革命」を見るまでは、私の過去の経験や価値観からイメージされた子育てをしていたのだろうと思います。そして、それを知らず知らずのうちに、そのまま子どもに移譲していたようです。私の価値観は、私が生きている時代の価値観で、子どもの未来の時代には何の役にも立ちません。価値観そのものを分け与えるよりも、どんな時代や社会に生きようと、「世の中を見渡すアンテナを立て、虚実を見分ける判断力を身につけ、どんなことにも自分で対応する」ような、こども達自身の価値観を培えるようにすることこそ大切。そう考えるきっかけとなったこの番組は、私のバイブルの一つです。

 

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