2008年10月5日日曜日

D.A.R.E.


 日本のモンスター・ペアレントではありあませんが、もちろんアメリカにも「困った親」は存在します。日本とは少々違った意味での困ったことなのですが。

 レーガン大統領時代、その夫人であるナンシーさんが提唱したD.A.R.E.(drug abuse resistance education)運動がありますが、ご存知でしょうか。一時の勢いはなくなりましたが、未だに続けられています。その意味は、子ども達を薬物の害から守りましょう、というものです。大人はもちろん、子ども達自身も薬物を手にするな、と教えるため、少なくない国家予算と人材が投入されました。人材として地元民の安全を任せられている警察官の中から、特に選ばれた係官が学校へ出向いて、子ども達にいろいろなお話を交えながら、教育していました。その現場を、私が娘のクラスへゲスト・スピーカーとして訪れたとき、たまたまDAREの係官と同じ日程だったのを、子どもと一緒に参観させてもらいました。貴重な経験になりました。
 その運動が盛んな頃、学校も積極的に保護者向けのDARE説明会を設け、参加を促していました。私もそれに出席してみました。校長からDARE運動に関する説明を聞き終わると質疑応答に入りましたが、それはもう次から次へと、親や近所のおじいちゃん、おばあちゃん達に至るまで、忌憚ない意見が出されます。なぜかというと、このDAREは税金を使ったプログラムでしたから、保護者に限らず納税者ならだれでも、「物申す」ことを厭いません。
 「薬物から子どもを守る教育をするのは、政府が税金をかけてやることなのか」、「家庭でやるべきことで、いまさらな話ではないか」などなど。そして、「何も分からない子どもが、自ら薬物にかぎらずアルコールやたばこ(アメリカでは、子どもにアルコールやたばこも薬物の一種と認識させています)に手を出すことはないはずで、身近な親や兄弟、親族から習っているのではないか」ということ、「子どもを教育するよりもまず、そんな大人を教育すべきなのに、一体その親を誰が教育するのか」という意見が出ると、盛大な拍手!結局、子どもを社会悪から守ることにはもちろん賛成だが、まず子どもは家庭で教育することが基本だから、家庭で出来ることはしてみましょう、ということになったのです。会合に出席した人たちは最後に、「子どもは親が守るもの」という熱いメッセージを交し合いながらも、「最近の若い親は」とか、「もともときちんとしつけられていないような人が親になってるから、家庭の問題を解決できていないだけだろう」など、どこかで聞いたような話も耳にしながら、散会しました。

 我が家の子ども達の小学校のある先生が、「子どもが抱える問題のほとんどは、家庭から発生する問題です。だから、親がきちんと子どもに対応すれば、家庭で解決できないことはあまりないはずなんですが」と、確信を持っておっしゃいました。

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